視覚支援の効果と弊害

定型発達の世界では、言語=聴覚による情報のやり取りがメインのように思いますが、
視覚から得られる情報もかなりのものがあります。
例えば、車を運転していると、行先を示す青看板、速度標識、停止線、車線など。
お店だと、メニュー、案内板、座席など。
ある会社では、備品を1回に持っていける数を文章ではなく、イラストで示している所もあるようです。
実は、聴覚よりも視覚によって情報をとることのほうが人間は得意で、
障がいのあるなしに関わらず、情報の80%は視覚から得ているそうです。

障がい児支援の場でも、視覚支援はよく使われる方法です。
特にASDの子は、言語による情報交換を苦手とする場合が多いので、
視覚的に分かりやすく情報を提示するやり方は理に適っています。
本人に合わせたものを準備する手間はかかりますが、言語を用いるよりもより早く高い効果が得られます。

視覚支援をする場合、本人の注目のしやすさや理解のしやすさを把握する必要があります。
手間を省くため、必要な情報を詰め込みたくなりますが、
どの情報に注目するべきか、わからなくなるので逆効果です。
視覚支援は、ASDの特性と本人理解に基づいて行う必要があります。

言語などによる聴覚に訴える支援はどうかというと、効果はそこそこ期待できます。
言葉の意味を理解できていなくても、音声の大小や高低、抑揚は何となく伝わっているようです。
注意しなくてはいけないことは、ある言葉を理解できているからといって、
それに近い他の言葉も理解出来ているとは限らないことです。
ここでも、ASDの特性と本人理解に基づいて言葉を選んだり教えたり伝えたりする必要があります。

視覚支援も言語指示も、ある所までは高い効果を発揮します。
ところが、視覚支援や言語指示を続けていくと、自立して行動することが出来なくなる場面が増えてきます。
かつては、言語指示をすると指示待ちになると言われていましたが、視覚支援でも同じことが起きます。
原因は、視覚的にせよ言語にせよ、どう行動するかについていちいち「指示」があるため、
指示があることが当たり前になり、パターン化させてしまうことだと考えられます

何かを学習してもらう際に、
一連の流れを、視覚的にまたは言語で伝えることは、出来るようになるまで必要ですが、
出来るようになってからは、段階的に指示を減らしていき、
何をするのか、「考える」「思い出す」ということをしてもらうことで、
指示待ちにならず、自立して行動できるようになると考えています。

大人が思っているよりも、ASDの子たちが出来ることは多いです。
かわいい子には旅をさせろと言いますが、
彼らの能力を信じて、任せてみる思い切りが、大きな成長に繋がることも多いのです。

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