支援者としてレベルアップする方法②

私には、生まれ育った北海道に友達がいません。
自分の性格が悪いことを理解していたので、嫌われないよう壁を作って人付き合いをしてきました。
自分を出さずに生活するのは結構大変でした。素の自分を出したいという思いもあったからです。

大学生活を過ごした東京には友達がいます。
彼らは、「それがお前だ。」と受け入れてくれました。
彼らのおかげで気持ちが楽になり救われました。最高に楽しい4年間を過ごせました。
大学を卒業して20年ですが、いまだに付き合いが続いています。

自分語りをしてしまいましたが、ここからが本題。
支援者としてレベルアップする方法②は「理解」です。
理解とは、広辞苑によると…
①物事の道理をさとり知ること。意味をのみこむこと。物事がわかること。了解。
②人の気持や立場がよくわかること。 とあります。
支援者として大事にしたいところは、②です。
理解してもらえる経験は、障がいのあるなしに関わらず人を変えるきっかけになります。

事例を2つほど紹介します。
ADHDで高機能のA君。
彼は、信頼できそうな人に暴言を吐いて試し行動をするという特性を持っていました。
彼がある日突然こう言いました。「お前の目を虫メガネで焼いてやる。」と。
私は、こう答えました。「痛そうだから別の方法ない?」
彼は、これまで暴言を吐くと必ずこっぴどく叱られてきたそうで、こんな反応は初めてだったそうです。
彼は、「ひどいこと言ってごめんなさい。」とすぐに謝ってくれました。
私は、「本気じゃないの知ってるから大丈夫だよ。」と答えました。
それから数年、困ったことがあるとあれこれ相談しに来てくれる関係が続きました。

自閉症で重度知的障害のBさん。
言葉はなく、パニックが始まると20分以上続き、他害も自傷もある子でした。
安全確保も兼ねて観察をしていると、一瞬こちらを見たような気がしました。
ピンときた私は、次のパニックの時に安全確保も止めて完全に人がいない環境にしてみました。
結果、5分後にパニックも自傷も収まりました。
彼女にとって人の存在や気配が、パニックや自傷を持続させる原因になっていたのです。
2か月後には、パニックも他害も自傷も毎日から月に3回程度まで減りました。

支援をするのも受けるのも「人」である以上、理解なくして信頼関係も生まれません。
言葉でのコミュニケーションが苦手な子たちだからこそ、大人側が理解しようとする努力が求められるのです。
定型発達とは違う脳の仕組みを持つ子たちを理解するための一つのヒントは、
障がい特性と人間としての共通部分を別に考えることです。
障がい特性は、そういうものと理解するしかありません。理由を考えても納得しようとしても答えは出ません。
男女で脳の仕組みが違うのと同じで、どうやっても経験や体験が出来ないものです。
ゆえに、「合理的配慮」が必要になります。配慮をするためには、障がい特性への理解が必須です。
人間としての共通部分は、自分に置き換えると理解出来ます。
支援者が、これまで経験したり体験したりしてきたことがほとんどだからです。
障がいというフィルターを外して、どうして?なぜ?と頭をフル回転させることで、解決策を導き出せるはずです。
障がい特性を理解することで適切な配慮が出来るようになり、
人間としての共通部分を自分に置き換えることで本人理解が進みます。
ここまで出来るようになって、初めて適切な支援がスタート出来るのです。

かつて一緒に働いていた上司は、「理解のない支援は虐待だ。」と言っていました。
「理解」が無い支援は結果が出ないだけでなく、子どもの時間も無駄にしてしまいます。
そういう意味では、理解のない支援は虐待と同じなのかもしれません。

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